吉川英治文化賞は、公益財団法人・吉川英治国民文化振興会が主催し、1967年の創立以来、文化活動などに著しく貢献した人物ならびにグループに対して贈呈されるものです。
鳥海氏は日本を代表する書体デザイナーとして、「ヒラギノフォント」「游明朝体」「游ゴシック体」など数多くの書体開発や、後進の育成指導、執筆活動などを行い、日本語の文字文化の継承と発展に長年貢献してきました。それらの功績が認められ、今回の受賞に至りました。
鳥海氏は、書籍の本文で使用されるベーシックな「本文書体」が、読者と物語をつなぐ役割を果たすものとして、そこに自身の書体制作の軸足を置いてきました。手がけてきた書体の数々は、「お米」や「水」のような存在と喩えられることもあるほど、普遍的なデザインとして魅力を放っています。
今後も、モリサワおよび字游工房は、鳥海氏とともに、高い品質の書体開発に尽力し、豊かな文字文化の発展に努めてまいります。
鳥海修氏の受賞コメント
夢にも思わなかった受賞で、たいへん驚くと同時に名誉なことです。これまで書体作りを支えてくれた皆様に深く感謝するとともに、少しでも書体制作に関わる方々の励みになってくれることを祈ります。
字游工房を一緒に設立した初代の代表・故鈴木勉は、吉川英治の小説も映画の宮本武蔵も大好きでした。そんな鈴木の新婚旅行は京都。奥さんを連れて一乗寺下り松の前で吉岡一門との戦いを夢想し、三十三間堂では廊下から地面に飛び降り、奥様に笑われた話を聞かされました。それから数年後、私が三十三間堂を訪ねると「ここからは飛び降りないでください。宮本武蔵が飛び降りた史実はありません」という旨の張り紙があって、可笑しくなったことを思い出します。
そんな「吉川英治」の名前と、常々、私が公言してきた書体は「文化」だということ。その二つの言葉が一つになった賞です。鈴木もきっと喜んでいるだろうと思います。
プロフィール
鳥海修 (とりのうみ おさむ)
書体設計士。1955年山形県生まれ。多摩美術大学卒業。79年写研入社。89年字游工房の設立に参加する。ヒラギノシリーズ、こぶりなゴシック、游書体ライブラリーの游明朝体・游ゴシック体など、ベーシックな書体を中心に100以上の書体開発に携わる。 2002年佐藤敬之輔賞、05年グッドデザイン賞、08年東京TDCタイプデザイン賞を受賞。12年から「文字塾」を主宰し、現在は「松本文字塾」(長野県松本市)で明朝体の仮名の作り方を指導している。22年には個展「もじのうみ 水のような、空気のような活字」(京都dddギャラリー)を開催した。 著書に『文字を作る仕事』(晶文社、日本エッセイスト・クラブ賞受賞)、『本をつくる 書体設計、活版印刷、手製本――職人が手でつくる谷川俊太郎詩集』(河出書房新社、共著)、『明朝体の教室 〜日本で150年の歴史を持つ明朝体はどのようにデザインされているのか〜』(Book&Design)がある。
モリサワ公式noteでは、2021年に行ったインタビューをお読みいただけます。「書体設計士 鳥海修さん特別インタビュー 〜字游工房の歩みと書体へのこだわり〜」
https://note.morisawa.co.jp/n/nbe70894ff0fd
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※ヒラギノは、株式会社SCREENホールディングスの登録商標です。
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